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非常事態宣言

小正月過ぎ診察室に入ったら主治医が考え込んでいた。昨年1年間の糖尿病の検査 値 HbA1c は 6.7~7.2 で推移してきたが、看護師さんが持ってきた検査伝票には 9.0 と記載されていたのだ。「う~ん。どうしたのかね?」「え!そんなに高い数 字?確かに暮れから少しだけ多く酒を飲み、おせち料理や餅も食べて食事制限はい い加減でしたが。」主治医は胆肝膵の検査をした方が良いとのことで、専門病院へ の紹介状を頂いた。言葉では言っていないが、どうも膵臓癌の疑いがあるとの指摘 である。非常事態になった。早速、専門病院の予約をとり CT、超音波検査などを 受けた。結果は膵臓癌ではなく、脂肪肝で

ほっとした。脂肪肝は40歳台から継続 しており、大した病気ではないと思っていた。

ところが、専門医は画像を説明しな がら「これは大変だ。肝癌になるかもしれません。」又もや、非常事態になった。 その日から徹底した食事療法をすることにした。

私の場合は禁酒である。

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たばこは、21歳から45年間続けていた。11 年前、孫に会うためと、 たばこの値上げを理由として禁煙に取り組んだ。禁煙ガムや、禁煙 パッチを使用し3か月かかった。全く欲しくなくなるまでは6か月もかかった。

「酒をやめる位なら生きていく価値がない」との信念を持って いる私に禁酒はたばこ以上難しく思われ、できるか自信がない。 取り敢えず、酒類を買わない減酒から始めることにした。 それでも家にはジン、ウォカー、日本酒にワインと結構な量がある。 大事に少しずつ飲むことにした。2か月後 HbA1c は7台

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になっていると自信を持 って受診した。結果は 8.4 であった。あれだけ我慢をしての結果に「ひょっとして 本当に膵臓癌かも?」と心配になり「非常事態宣言」をすることにした。幸い、家 には酒は紅白の高級ワイン2本だけとなり、本格的な断酒に取り組むことにした。 タバコの時とは異なり、禁断症状は特になく「アルコール中毒」ではなかったよう だ。6月の受診の時「どうしたのかね?急に 6.5 に改善したが!」「二人の先生の脅 しのお陰で断酒できました。」主治医は専門医への紹介状に「強い生活指導を!」 と書いておいたとばかりニタニタ顔であった。お陰様で8月の検査値も 6.4 と良好 な値で主治医も笑顔であった。何故、非常事態宣言が成功出来たかを考えてみた。 たばこの時も同じで、健康のためだけではなく、どうも「人に認めてもらいたい」 が原動力であり、その補佐が「おかね」のようだ。

このふたつがやめられて無欲無我になるのは、恐らく死の直前であろう。

もう「非常事態宣言」はしたくない。

 
 
 

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