私はアブラゼミ
- 加藤 誓(ちかい)

- 2021年6月2日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年6月17日

今年は大変だ。外に出ようとするが、毎日の大雨で
なかなか出られない。
聞くところによると、人間もコロナ禍で家に何か月も籠っているそうな。
籠ることなら私は負けない。もう6年も土の中で
籠ってきたのだから。
ただ、私には、この2週間でどうしてもやらなければならないことがある。
雨に負けるわけにはいかない。
意を決っしてこの朝早く起き外に出ることにした。外は、朝でも ムシ暑く 以前とは
変わっていた。
廻りの環境も変化し 私たちの町にも 敵対視していた「クマゼミ」がいつしか進出して
きたのだ。
早朝にも拘わらずお互い相手を威嚇するように大声を張り上げ自己を主張しはじめた。
私も精一杯の声を張り上げた。
道端に大雨で濡れた新聞が落ちていた。
大きな目で読んでみた。

「トランプ 対 バイデン」「中国 対 米国」 「香港 対 中国共産党」「日本 対? 」など 人間も勢力争いが激しさを増してきたと一面に載っていた。私も頑張らなくては・・・。
私の目的は、デモで騒ぐことでも 勢力争いをすることでもない。
土の中での長い辛抱から解放され 大いに羽を伸ばし 空を自由に飛び回り
喜びを爆発させ、 そしていい嫁さんを早く見つけて子孫繁栄のために働くことである。
どうしょうかと 迷ったり、ジィーと考えている暇はない。

私の寿命は後 2週間しかないのだ。
目的のためにあちらの邸宅から、こちらの邸宅、あちらの
公園から、こちらの公園 そしてゴルフ場と 生命ある限り
木々の間を飛び回る。
私の名は、通称「アゼミちゃん」。アブラゼミである。
秋が近くなったのか、今日は、静かな 静かな 朝であった。
頑張ったね「アゼミちゃん」



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