私のお耳
- 加藤 誓(ちかい)

- 4月24日
- 読了時間: 3分

酒を飲んでいた。
台所から女房が「はげあくのか、しやあっこかどっち?」
「はあ?」もう一度女房が「かげか、さっこかどっち?」 「何!」とうとう、大きな声で女房がゆっくりと
「油あげを焼くのか、冷奴ですか!」と。
私は答える「両方とも ⤴!」と。
それ程の難聴ではないと思っているが、女房に言わせると 「相当ひどいですよ!外へ行く時はいつも補聴器を付けていないと人様が迷惑します よ!」と言われている。
会議の時は、距離もあり確かに補聴器がないと聞きづらいし、人様に迷惑が掛かる。
しかし、通常の会話では近距離でもあり、最初静かに聞いていると、何の話をして いるのかがおおよそ分かり、相槌や会話に困ることはそんなにない。
家庭でも、女房が穏やかに喋っている時は、聞こえた単語で約、話の内容が分かり
「ふん、ふん!それはお得な買い物ができてよかったね!」と聞こえたふりで大丈夫。
だが、日常会話であっても、私への突然の質問というか、私が女房に何か答えなけれ ばならない会話がきた時、何の話か推定がつかず「えぇ!」と聞き返すことが度々であ る。 「あんたの話は、声が高いのか、早口なのか、入歯の所為か聞きづらい。他のひとの話 はしっかり聞こえるのに!」と開き直る。
逆に、しっかり聞こえてはいるが、都合の悪い話の時は、聞こえてないふりができるのも 利点である。
そもそも、補聴器を付ければ良いのであるが、耳の穴に付けることが鬱陶しいことと、 付けた時会話以外の音、食器洗いの「ガッチャ!ガーン!ジャー!」という音や、自分の 咀嚼音、レンジの「ジーン!」トイレの「ゴォー!」等など、世の中が騒々しく感ずるのであ る。
「テレビの音小さくして!」女房が叫ぶ!
面倒くさくなり、音量をゼロにする。
「六角精児:飲み鉄・紀州の旅」を見る。テッロプが出て内容がほぼ分かる。
ディーゼルの軽やか音が聞こえる。電車の中で酒をうまそうに飲み感想を述べる。
「うーん、さすが年代物の梅酒、これはまろやかでうまい!」しっかり聞こえるのである。
「吉田類:酒場放浪記」「地元高知の酒、酔鯨は懐かしい!クジラのベーコンも酒に合うね。 美味い!」チャンと聞こえるのである。
これに、味をしめテレビはいつも音量ゼロで見ている。
ニュース番組では、トランプ大統領がホワイトハウスで両手を広げ、怒鳴っている。
音量ゼロの状態でも、赤鬼が日本語でまくし立てている声が、私には聞こえるのだが、
何を言っているのかは、サッパリ分からない。
「プロ野球やサッカーの観衆」の雄叫びも、「世界遺産」「ギョギョとサカナ★スター」 の解説も聞こえ、何と「クラシック演奏」を聞きながら眠ってしまうなど、音量ゼロに
はまっている。
今のお耳は私にとって「静かで心休まる」最良の状態であるが、女房をはじめ皆様には 時々、迷惑をお掛けするかも。



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