補聴器
- 加藤 誓(ちかい)

- 2021年6月8日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年7月2日

補聴器店を訪れた。問診のあと、最新式補聴器を薦められた。
音量だけでなく、個人毎に聞き取りにくい周波数を補ってくれるとのこと。
その上、周りが静かな状態か 騒がしいかを 自動的に察知し、
音の聞こえる範囲巾まで調整してくれて、柔らかな音質で聞こえるようになるとの説明。 これは、素晴らしきAIだ。
個別調整をしてもらい 取り敢えず 1週間試してみることとなった。
「これで、楽に聞こえる」と喜んで家に飛んで帰り

女房に補聴器の機能を得意げに説明した。
テレビの音量が30から18に、
以前聞き取りにくかった離れた位置からの女房の声も
ハッキリ聞こえた。
女房も「あなたの大きな声が、小さくなったよ。」
と嬉しそうに言った。そこまでは、良かった。
トイレに行った。流し水の音が、「ガガー」と頭中に響いた。

お菓子を食べながらテレビを見ていた。咀嚼の大きな
「くちゃくちゃ」の音。
台所の茶碗のトライアングル音、鍋の蓋のシンバル音、
食器棚のカスタネット音、
どれも女房が 目一杯叩いた打楽器の 不協和音のようだ。
蛇口から「ヒネルトジャー」の騒音まで。
その度に脈が乱れる。
テレビの中は、籠った甲高い女性の早口不明言葉。
首から上がガンガンと大騒動、テレビを見る気が全く失せてしまった。

補聴器の先輩に、そのことを相談したら
「その音は通常の人には聞こえている音だから、その内に慣れるよ。
また店で再調整してもらえば改善するよ」とのこと。
次回の補聴器店訪問までの辛抱と慣れる努力が大切なようだ。

それに音量調整のリモコンもあるそうな。
今回、補聴器を付けてみて気付いた事がある。
弊害がある人は別として補聴器で改善できるような軽い難聴の人は
実は「騒音や雑音が少なく、心穏やかな静かな環境」を今まで満喫し
楽をしてきていたのだ。

例えれば、難聴も認知症みたいなものだと。難聴も認知症も周りの人には、迷惑な病気である。
しかし、認知症本人には「死への恐怖」や「退屈」「気配り」が要らず案外都合良いものかもしれない。
難聴にも気付かなかったが利点があったのだ。
そうは言っても、自称 認知症ではない私は、
周りの方に迷惑を掛ける訳にはいかない。補聴器は、付けよう。
但し、一人の時はそっと外して「心穏やかな静かな環境」を楽しむことにしよう。



コメント